にぎやかな未来と埋まらないギャップ
少し前ですが、筒井康隆さんの「にぎやかな未来」というショートショートが角川書店より復刊いたしまして、その本のイメージにウチの画風がハマっているということから、装画を担当いたしました。
装画描く場合、出版の数ヶ月前にゲラが送られてきまして、まずそれを読んでから編集担当の人イメージを擦り合わせていくのですが、このゲラというのが、本になる直前のトンボがついたものをコピーしたもので、時には誤字脱字のチェックが入っていたりするという一般の人は見ることのできないモノ。
若い頃小説好きで、装画の仕事に憧れていた者としては、このゲラを読む時に優越感を感じる訳で、まだ世に出てない小説を読んでいて、しかもこれから僕がこの装画を描くんだよ! と周りに言いたくなる訳です。
でも露骨にそんなこと言うのもカッコ悪いので、お客さんが来た時に、そのまま手に持ったまま雑談したり、入ってきたお客さんから見えるところにゲラを置いてみたりと、演出に工夫を凝らして見るのですが、結局自分から話を振らない限り気づいてはもらえません。
余談が多くなりましたが、ゲラ読んでてほんのり思い出したのが、あれれ?この本読んだことある。。。
ご多分に漏れず、僕も中学生の時には星新一さんや筒井康隆さんの片っ端から、というと大袈裟ですが、面白そうなショートショートは、大体読んでいたものですから、この本もそんな若い頃に読んだ中の一冊だったのです。
思い起こせば、これを読んでいた僕の中学時代。ブレードランナーが公開される以前の日本の未来は明るくて、宇宙船は流線型で白にブルーやオレンジ。街には透明なチューブがビルの間を縫っているという、アトムを引きずったままの世界観。
あの頃の人たちって楽観的な未来像を持ってたんですね。
少なくとも僕はそうでした。
そして、ブレードランナーやマッドマックス2の公開以降、僕らの未来像は変わっていくんですが・・・。
僕が描くイラストのモチーフにもSF的な要素がよく登場するのですが、このクラッシックな未来感を意識して描くようにしてきました。
それは僕らにとっていつまでも未来は明るいものであって欲しいと言う希望が大きいのですが、同時にこの中学生の頃に読んだショートショートの影響がとても大きかった事は言うまでもありません。
それがぐるりと一周したかのように僕に装画の仕事が回ってくるとは!
マーフィーかエントロピーか、何かの法則に従って起こったことは、間違い無いでしょう。
そして、僕が未来を夢見ていた中学時代からの35年後の現実とは・・・
長くなったので次回に続く。KAMIGAKI
にぎやかな未来 (角川文庫)
「超能力」「星は生きている」「最終兵器の漂流」「怪物たちの夜」「007入社す」「コドモのカミサマ」「無人警察」「にぎやかな未来」など、41篇の名ショートショートを収録。
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